save MLAK 緊急討議 「東日本大震災 被災支援とMLAK−いまわたしたちにできることは」 に参加して | |
日時: 2011年4月23日(土) 午後1時〜午後2時半 場所: 学習院大学 (目白) 南3号館203教室 呼びかけ人: saveMLAK有志 http://savemlak.jp/ | |
kms参加者 東1名 | |
去る4月23日、学習院大学にて 「saveMLAK」 有志呼びかけによる緊急討議が行われた。 この 「saveMLAK」 とは、3月11日の東日本大震災の折にインターネット上からの呼びかけでできた、 博物館 (M) 図書館 (L) 公文書館 (A) 公民館 (K) の関係者による支援プロジェクト (Webサイト) である。 本会は、日本アーカイブズ学会総会に企画されていた講演会が急遽中止となったため、その時間に 「緊急討議」 として 企画されたため、開会に先立ち日本アーカイブズ学会会長、高橋実先生 (国文学研究資料館) の黙祷で始まり、 呼びかけ人の一人である岡本真氏 (アカデミック・リソース・ガイド株式会社 http://www.arg.ne.jp/) の発言で口火を切った。 | |
◎ 岡本氏からの報告 震災当日のTwitterで 「ライブラリーサービスはいまなにができるか考えようぜ」 と呼び掛けた。 追って博物館や公文書館などの関係者がWeb上に情報をあげ始めた。 個別にサイトが立ったので、統合できるよう、3月12日にWikiを構築した。 MLAの情報を統合させた。 (まだKはなかった) その後もTwitterからの情報収集や協力により、Wikiを充実させた。 【自発力と技術力】 津野海太郎氏の発言から大きな組織に一方的に任せてしまうのではなく、新しいネットワーク技術を操り、組織を自発的 に作りってしまうとの評を頂いた。 ( 「揺れる東京でダーントンのグーグル批判を読む」 (マガジン航、2011-04-18)) http://www.dotbook.jp/magazine-k/2011/04/18/thinking_about_google_books_project_after_the_quake/ 新たなネットワーク技術による情報発信と収集が行われ、被害状況などが浮き彫りになった。 こうした情報の支援が行われたことは今までにない。 「この後」 に 「プロフェッショナルのボランティア」 が必要になる。 (修復や記録管理など) ⇒ プロボノ という活動が必要になる。 【問題点】 個人ベースでの活動に所属組織の阻害があった。このことからも所属組織の理解や協業が必要になる。 【今後】 これらの情報を知識化して、次なる災害に備えるべき。 | |
◎ 博物館 (M) からの報告 山村真紀氏 (ミュージアム・サービス研究所http://ameblo.jp/museum-ya/) 12日に支援用のサイトを開設。 課題として被災地の博物館のリストがなかった。 そこで利用したのが 「全国博物館総覧」 であった。 その後 「インターネットミュージアム」 (http://www.museum.or.jp/) からリスト入手 ⇒ Twitter をキッカケに。 博物館以外としては 「寺社仏閣リスト」 を学芸員が作成した。 【Mならではの課題点】 美術館は情報公開が難しいということ。 水族館、動物園、埋蔵文化財など多様な為、画一化が難しい。 | |
◎ 図書館 (L) からの報告 常世田良氏 (日本図書館協会事務局次長 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jla/) 災害時、各県立図書館が被災状況を収集、集まる形になっているが、今回はあまり機能しなかった。 日図協の図書館支援隊の派遣したが、阪神淡路大震災と比べ高齢者が多かったため、絵本や児童書主体だった サービスの検討が必要だった。 【非被災地からの情報】 遠隔地から被災地への情報提供。 被災地では分からない情報が多くある。 このことからも関東の館だけでなく、関西の大阪府立図書館も入れる。 各種団体からの協力を得られた。 ⇒ 例えば著作権などで考慮いただき、小説全体をファクスで送ることができた。 しかしながら、これらの事柄は事前の調整が必須になる。 | |
◎ 公文書館 (A) からの報告 青木 睦先生 (国文学研究資料館 http://www.nijl.ac.jp/) 全史料協が中心に文化財レスキューが組織された。 各種団体と協議会が作られた。 今回のような大規模な災害時では、海外への情報発信も重要になる。 受援力をつける。助けを求めるというのも大変だということを分かってほしい。 心の準備できていなかった。 日常の活動こそが重要。 | |
◎ 公民館 (K) からの報告 神代 浩氏 (国立教育政策研究所教育研究情報センター長 http://www.nier.go.jp/index.html) 【ITリテラシーの欠如や想定外の事象】 こうした催しに公民館関係者の出席が無い。 これが公民館の実情。 被災地では公民館が想定外の避難所になってしまった。 公民館の連合会があったが、機能麻痺してしまった。 ⇒ 多くの関係者が学校関係の要職についていることが多いため、後回しになってしまう。 【過度の自粛】 非被災地の過度の自粛により、災害に有効な講座なども中止された。 公民館関係者のITリテラシーの欠如、理解不足。 個人的には今回のようなMLAKのネットワークを、避難所レベルにまで行き渡らせるのはどうかと考えている。 被災地が望んでいる援助の情報はなかなか挙げられない。 押し掛け支援本部⇒要望を聞いてから動くのではなく、まずは現地に押しかけ、情報収集し、支援を行う。 滋賀県などが行っている。 | |
◎ 文化財レスキューから 栗原祐司氏 (文化庁文化財部美術学芸課長 http://www.bunka.go.jp/index.html) 【文化財 「等」 】 瓦礫の撤去が始まるが、その中に文化財等が含まれているかもしれない。 文化財等の 「等」 が大事。扱いによってはゴミになる。 【阪神淡路大震災との違い】 津波によってさらわれている。 水による被害。 洪水の被害と同じ。 古文書と瓦礫がいっしょくたになっていることもある。 避難して応急処置しなければならない。 今回のレスキューは、国指定文化財以外をターゲットにしている。 専門家にレスキューに入ってもらい、一時処理をお願いする。 その後、現地の方々で単純作業。 瓦礫によって入れない館もある。 公民館にはモノは関係ないと思っていたが、古文書講座などで置いてある場合があった。 事前にどこで作業を行うなどの情報は盗難防止のため、公開できない。 阪神淡路大震災のときは70日だったが、今回は100日の予定。 | |
【質疑応答など】 ・民間企業の方 学芸員6人中5人亡くなった館があった。 そこのPCデータの復旧、資料カード作成等を行っている。 写真資料は現地で洗っており、デジタル化している。 資本力が無いので、インフォコム社がバックアップしてくれている。 ・東北大学図書館の方 連携は中々とれていない。 ・被災地での修復関係の活動 文化財保存修復学会 ・東京都写真美術館の方 写真資料の修復は個人の思い出の修復。 一つの集落で物凄い数の写真があった。 フジ、コダックでのHPでも対応に違いある。 ・サードレスポンダルというプロジェクトを行っている方 地図をバーチャルで作るプロジェクトを行っている。 各被災地の過去を記録し、マッピング。 ダイナミックに更新できる地図作る。 ・藤沢文書館の方 福島の放射能汚染圏内の資料救出は? ・全国学校図書館協議会の方 学校の許可が必要 当日のインターネット中継録画を、下記よりご覧いただけます。 http://www.ustream.tv/recorded/14214310 | |
【KMSの感想】 地震発生から1週間足らずでWeb上にWikiが立ちあがり、今までMLAの連携という言葉ばかりが先行していた各団体が、 このように結びつくことは想像だにできなかった。 この化学反応にも似た状況を生み出したTwitterというツールの効果を目の当たりにしたようだった。 震災による文化財への被害は、今までは国宝などの指定文化財にのみ焦点が当てられ、地方の文書などの地域の史料や 図書館の蔵書などはあまり報道されていないように見受けられたが、今回は早い段階から報道されているように思えた。 ただし、必ずしも正確ではなく、後になって訂正にも似た追加報道がされていた。 (例えば法務局関係の資料は、当初は 「失われた」 と報道され、後に 「バックアップが業者にあった」 など変化していった。) 法人によっては財政基盤の関係上、大変に苦しい館もあると聞く。 これら文化財関係にも国の手厚い保護を切に望む。 参加されている方々の顔ぶれは、この後に行われた 「日本アーカイブズ学会 総会」 の参加者は4分の1程で、殆どの方は この討議の為に集まった方々ばかりであった。 告知はWeb中心であったため、それなりの知識を有した方の参加であったと思われる。 発言にもあったが、今後の課題として、ITリテラシーや情報格差といったものが考えられる。 Web に縁の無い方々への周知や情報提供を考える必要があるだろう。 会の意義や参加者数からしても時間が短すぎた感は否めなかった。 発言を聞きそれを膨らませる時間が無いことが惜しまれたが、saveMLAKの発足背景を考えれば、今後の発展はWeb上で 行われるべきだとも思った。 会の内容はWeb上で中継されており、Twitter上でも発言されていたが、このようにWebを介した会は今後増えていくだろう と思われる。 今後、動画や発表資料をWeb上で共有できるツールが不可欠になっていくことであろう。 |