独立行政法人国立公文書館、アジア歴史資料センター主催
アジア歴史資料センター設立10周年記念シンポジウム
「アジ歴10周年の回顧と展望」 に参加して

本レポートは、社内向けに作成した営業報告を参考情報として開示しています。

・日時:2011年11月18日 14:30カ〜18:00
・場所:早稲田大学小野記念講堂
・主催:国立公文書館 アジア歴史資料センター
・テーマ:「アジ歴10周年の回顧と展望」

●司会者:清井美紀恵 アジ歴次長
●開会挨拶:高山 正也 国立公文書館館長
●挨拶:園田 ?康博 内閣府政務官
●来賓祝辞:福田 康夫 元内閣総理大臣/衆議院議員
●基調講演:ドナルド・キーン コロンビア大学名誉教授
●パネルディスカッション
‐コーディネーター:平野 健一郎 アジ歴センター長、東京大学・早稲田大学名誉教授
‐パネリスト:
ウィリー・F・ヴァンドゥワラルーヴァン
カトリック大学文学部教授(ベルギー)
         歩 平 中国社会科学院近代史研究所前所長(中国)
         李 相燦 ソウル国立大学国史学科教授(韓国)
         川島 真 東京大学大学院総合文化研究科准教授(日本)
 kms参加者 新 1名
●来賓祝辞:福田 康夫 元内閣総理大臣/衆議院議員
・アジ歴は、歴史の史実を選別し、世界に史実を公表するユニークな組織で、小さな組織からうまれた大きな仕事をする「小さな巨人」であることを評価したい。 
・現在2300万画像を実現し、さらに3000万画像、それ以上を公表することをめざすことを大きな期待としている。
・「日本に都合の悪い歴史資料を外国へ示すことはないだろう」と素朴に考えるとはあるが、それをあえて発表してゆく、世界に発信してゆくこと勇気があるこであり、 そういくことを続けることで、世界の日本に対する信頼感が格段に増してゆくのではいかと思っている。
・ヨーロッパはドイツを中心とした国際歴史教科書というものを作っており、平和ため、国の信頼度を高めるための動きとして、国際歴史教科書をつくったと思われる。
アジ歴の活動も日本の国際教科書と言ってもようのではないかと思っている。
・日本の平和を有するのに大事な役割をアジ歴が果たしていると思っている。

・政府の資料だけでなく民間にも歴史を形成する非常に重要な役割を果たす資料があるの
で、将来拾い上げていって頂きたい。夢ものがたりになるかもしれないが、そのぐらい
の意気込みで日本の姿、形をアジ歴で作っていって頂きたい。
・公文書と連携をとり世界へ示してゆくことを考えていって頂きたい。
・独立行政法人の制約条件の中で確固とした立場で国民の観点・視点にたって、真実を追い求め、診断を見極める。
●基調講演:ドナルド・キーン コロンビア大学名誉教授
 キーン氏は、日本の研究にあたり、「外国人にはつらい事」について語られた。
 研究の弊害となる事象がある
 (1)日本語が読めても・・・
    日本語が読めるようになっても読めない文字がある。
    たとえば、有名人(女優)の色紙は読めない
 (2)日本の本はかざりものの本が多い(学者には扱いにくい)
    人名や地名は索引が無くては理解が難しい
    たとえば、明治天皇の記事が50個ある場合、索引50個読まないと明治天皇が分からない。
    私の本(キーン氏の書)では、明治天皇を●●さんがどう描いているかすぐ分かるように書いている。
 (3)漢字の正しい読み方
    発音だけではわからない事が多い。
    たとえば、名神高速(めいしんこうそく)を迷信高速(めいしんこうそく)と読んでしまい、
    魔女が出る高速道路と解釈してしまうこと。
    また、森鴎外の本は、ルビが無いと読めない。(ルビがあると読みやすい)
    上記のようなことがあり、日本語を学び理解しても、外国人はつらく、無駄な時間になっている。
●パネルディスカッション
  平野氏よりパネリストの方々へ質問を行い各国(日本、ベルギー、中国、韓国)の研究者の方々視点で回答を行う。
   ■研究でアジ歴を利用した事例について
  (ベルギー)→岩倉使節団、万博史、
  (中国)→日本軍の毒ガスの研究、日本の戦争・反戦運動、満州事変
  (日本)→義和団事件

   ■アジ歴に対する研究価値面での評価(アジ歴の利用者を増やすには)
   ・全文のテキスト化(各国で翻訳が可能となる)
   ・韓国語でも検索(現代の韓国では、漢字を読める人が少なくほとんどハングル語であるため)
   ・教育の現場で使えるようにならないか?
   ・欧州では、日本学者は最近くずし字、日本の漢文

【補足事項】
 ※EAJRS (日本資料専門家欧州協会)(ウィリー・F・ヴァンドゥワラルーヴァンが理事)→公文書・古文書に密接な協会で、年に1回学会を行っている。
  http://eajrs.net/
※EAJS → EAJRS の上記組織 3年に1回学会を行っている。
  http://www.eajs.eu/index.php?id=273&L=1&cHash=b46fbb6a7417b84509b38803e79df7e6

●質問:
 Q 大学図書館関係者
検索機能だけでなく特定のテーマについて文書の解説を行うことなど?一般に利用者が利用しやすくする
ことについてどう考えているか?
 A(平野氏)
特別展、トピック、スペシャルコーナーを企画している。中立的に資料を紹介するのが難しいテーマで、
しかも、一般の利用者にも関心があるテーマなので、用心深くテーマを選んでいる。歴史認識により冷静な
雰囲気ができてくればもっともっと重要なテーマも取り上げる状況になる。長期的な視点でおずおずと
進めてゆきたい。

 Q 国立大学 留学生
   中国の資料館でデジタル化の説明をしているが、2008年頃までかなりの量を内部的にデジタル化が
行っているが、デジタル化に伴い、中央に資料が搬送され、個々閲覧できなくたった。
2009年にはもともと公開していた情報も閉じてしまった答案もある印象がある。
   ネットで見れないのはしょうがないが、海外の紹介状をもとに閲覧できることを希望したい。
  A(歩 平氏)
学者と公文書館の間で対立の関係があり、公文書館の開示はマヒしている。
資料の保存の問題や資金の問題。2005年以降はデジタル化を行っているが、デジタル化になると、学者から
批判もある。公文書館の問題もある。

●KMSの感想
 各国のパネリストから日本のくずし字の判読が大変である声が多かった、また、アジ歴の検索キーワードは書誌の最初の300文字をキーとしているため検索で「見つけやすい」資料が研究材料となるため、見つけられた情報をもとに研究が進められてしまう(DBに載った資料と載らなかった資料の格差)ことで、 今後20年50年後の歴史が史実と異なった形で残されてしまう可能性があることを知った。全文テキスト化、全文検索が可能なDBの構築が可能になることで、 アジ歴で公開している歴史資料が、パネリストの研究者の方々にとってもっとも有効な情報配信であると感じた。
デジタルデータ(画像、テキスト)が真正であることを担保できるWEB公開(検索・閲覧)が理想であり、 対象とする利用者層にあった、デジタルアーカイブの構築が必要と感じた。
当社で学術研究者の方々へ提供している「kmviewビューワー」「Kmsearchview BD検索システム」などWEBでの情報提供に関わるサービスは、
図書館の「一般の利用者」、「学術研究者」など利用者層、目的に沿った提案を行うことが必要と感じた。